「バニラかチョコ」、真夏の愛

ジャニーズWEST 17thシングル「でっかい愛/喜努愛楽」の通常版に収録されたカップリング曲、「バニラかチョコ」がとんでもない。

 

作詞・作曲 ジャニーズWESTの絶対的センター、重岡大毅

この言葉も、このメロディーも、等身大の「29歳職業アイドル」から生まれたらしい。

 

考察ってほどでも、解説ってほどでもない、ただの……妄想?というには歳を重ねすぎたけれど、社会に揉まれ、甘酸っぱさと倦怠し、安定と刺激の共存共栄は厄介だと気づいてしまった若者が、この曲の眩しさに負けじと目を輝かせた箇所の記録です。

やらなきゃいけない森羅万象を全て放っぽりだしてでも、この作品と真夏の恋をしたかった。否、愛を。

 

良ければプレイヤーを再生しながら、時に止めたりもしながら、彼の世界へどうぞいってらっしゃい。

 

 

長くなった短い話 とっくに冷えた頭とつま先

玄関悩んだ スニーカーorスリッパ

どうせすぐ帰るつもりだったけど 

初めに言っておくと、この作品の軸は、「男性はやっぱり女性には敵わない。俺はやっぱりお前には敵わない。けれどそんな自分が、人生が、とっても愛おしい」というところにあるんだと思います。

歌いだしの舞台は、喧嘩して2人の住処を飛び出した街灯に照らされる夜道。恐らく事の発端は彼女。男性だらけの食事会に出て酔っぱらって帰ってきたところに、必要以上に突っかかってしまった彼…とでも仮定します。(少女漫画の読みすぎ)(ド定番)

「なんでこんな遅いねん」「連絡ぐらいしろや」と小言だけのつもりだったけど、「遅くなるって言った」「もう良い歳の大人なんだけど」と長くなってしまった話。

頭を冷やすために外に出たのに(きちんと男の自分が外に出るという設定)、飛び出す時にスリッパを選んでしまったから(表題 バニラかチョコ にかけて随所に散りばめられた「or」の表現技法)(後の「すぐ帰るつもりだったから」スリッパを選んだ、とも掛かっている)、つま先まで冷えてしまって。

 

ここまでで、長い時間がすぎてしまったこと、引くに引けない性格なこと、いろんなことを想像させる。「どうせすぐ帰るつもりだったけど」で追い打ちをかける。

重岡くんは、作品を受け取った人に自由に想像させるための、“余白”の塩梅が天才。それでいて、すべての詞に対して仕掛けがあって、繋がりを持たせていて、センスが良い。

見上げなければならない目線から、でも眉尻を下げながら、短く済む話を長いものにしてしまいそうな小瀧くん。「まあええやろ」ってスリッパを選びそうな照史くん。歌割もすごく面白い。

 

先に君あとから僕が良い “ごめんね”

引くに引けずにコンビニエンスストア ウロチョロ

うつろな顔の深夜バイトのお兄さん 

厄介ごと 一仕事 お互い済まそうか

歌割の続きだけれど、「先に君あとから僕が良い」って一番言いそうな淳太くんに、コンビニウロチョロして悩みそうな濵田くん(笑)先に歌う人想像しながら詞を当てた?ってくらいドンピシャで最高。

ここの主人公は、やっぱり悪いのは彼女なんだから、先にアイツから謝ってほしい。ちょっぴり男としてのプライドもある感じ。

歌い出しの節に寄り添ったメロディーの繰り返しなのに、しっかり場面が展開していて、サビへ向かって盛り上げていて、音にハメた言葉の区切りも独特で楽しい。

「厄介ごと」と「一仕事」で韻を踏んだり、済まさなければならない事象を、突然もうひとりの人物(コンビニお兄さん)と掛けて多面的な情景を彩ったり。

作詞と作曲のセンスって別ものかな、と素人は思うわけだけど、自分の世界観を詞にも音にもぶつけることができるのが、音楽プロデューサー重岡大毅だ。

 

ほのかに口下手くらいが可愛いのに

きっと彼女は、関西弁の達者なおしゃべりをする人で、素直になれない不器用な人なんだろうな。主人公である彼の、愛おしい“苦笑い"が鮮明に引き起こされる。

この歌詞のボヤキは、まったく嫌みったらしくなくて、むしろ「愛おしい」が溢れていて。これほど優しい表現になるのは、アイスクリームの甘い香りにかけた「ほのかな」という形容詞の効果か、否か。

 

期間限定アイスクリーム

バニラかチョコのバリエーション

白か黒かで余り物はダーリンダーリン

曖昧な時は甘いチョイスをホラ

ビターで苦いのが僕は好き うんソレで良い

サビで、主題の本質へ触れるみたい。

バニラとチョコの見た目としての白と黒を、2人のイザコザに白黒つけたい気持ちに見立てているところとが好き。

まだ彼女が白黒はっきりせずに文句垂れてるなら、甘いバニラ(白)を選ばせる。

ここに込められた「結局あなたがシロ(=俺が折れる)」とか、「お前に“甘い”俺」とか、「お前の性格に“苦”笑いして、“ビター”を選ぶ俺」とか、「“余り物”といいつつ好きなのはチョコ味の俺」とか、「アイスの”or”も、俺たちの関係も、“それでいい”」とか。

楽しい。重岡大毅の世界観に吸い込まれる。

 

告白した夏の夜トリップ Yes or Noのシチュエーション

今も昔も決まり文句でダーリンダーリン

大抵のことは甘いアイスをホラ

おかえりは無くても グッバイ また頼むぜコンビニ

サビの続きは、ごめんねのアイスを買い終えてコンビニを後にしながら、付き合い始めた頃を思い返しているシーンだと想像しました。

彼女に告白した日は、夏休暇を利用した二人旅で、今日みたいに暑苦しい夜だったな…とか。

今も昔も優柔不断で、例えばご飯屋さんのメニューを選ぶのがめちゃくちゃ遅いタイプの彼女。告白の返事も「or」で問うけれど、きっと彼女は「or」は苦手。はっきりしない天邪鬼。

でも主人公は、彼女がバニラが好きだって知っていて、大抵は甘い方を与えておけば正解だと思っていて。告白には、「はい」という甘い返事なのも、分かってる。

甘酸っぺ~~!!!

今日も、帰ったらまだ拗ねてるかな、おかえりって言ってもらえないかもしれない。だけどアイツはまた「甘いバニラ」を選ぶだろうな。

なんて、容易に想像できる主人公の感情。とにかく彼の愛おしい姿に感情移入してしまう仕組み。まんまとハマってる。

 

一か八か作り話 とっさにひねった頭と口先

必要な嘘は有罪or無罪か

すまし顔 優しい顔 お願い見逃せないか

2番は彼女側に視点が移ったとも読めるし、1番の続きで家に着いた後という考え方もできるけれど(これも受け手に自由を与える重岡くんの真骨頂)、今回はコンビニ帰りの夜空に彼女との思い出を見上げる僕の続き、ということで進めていきたい。

きっと彼らは、昨年の冬も今日と同じようなことで喧嘩をしていて。あの時は主人公側に非があって、女の子と飲みに出て遅くなったことを問い詰められた、という風な事件に設定します。(妄想に意気揚々)

主人公は咄嗟に必死に弁解して(頭を捻るに掛けた口先をひねるという「嘘」の比喩がとんでもなくオシャレ)、本当に何もないんだからと、彼女を安心させたくてすました顔してやり過ごす。そしてまた、この嘘は許してくれますか?の「or」を彼女へ投げる。

 

ほっこり鈍感なくらいが可愛いのに

きっとその嘘は彼女にはバレバレで、バレバレなことを主人公も理解していて。

 

出し過ぎ注意ハンドクリーム

シェアするべきコミュニケーション

ひび割れ防止で余り物はダーリンダーリン

あんまりな事はドライなチョイスさホラ

ベタつく空気が君は好き うん割と好き 

結局、初めからきちんと話し合っていればすれ違う必要のなかった揉め事だったみたい。だって彼女の誕生日プレゼントの相談を、彼女の友人にしていたのだから。

 

ハンドクリームが、「潤い=過剰な心配=重めの愛」と掛かっていて、それは時に出し過ぎ注意なんだという表現。

ハンドクリームを出し過ぎたなら二人でシェアするように、思っていることも正直に伝え合い分け合うべきという表現。

二人の「ひび割れ=イザコザ」は、分け合ったハンドクリームで潤せばいいという表現。

「ハンドクリーム=愛」を出し過ぎた、という意の「余り物」がまた1番の「チョコは余り物」と掛かっているカラクリ。

彼女は分かりやすいから、あんまり納得していないチョイスの時は「顔に出る=ドライな表情」だけれど、ここの「ドライ=渇き」もまたハンドクリームで補修すれば良いという、言葉の絡み合いのフルコンボ

そして「ベタつく空気=ハンドクリームの出し過ぎ=過剰な愛」による甘ったるい空気、彼女はそういう空気がなんだかんだ好きなこと、僕は知っているんだよ。という主人公の表情を想像させる技法。

怒涛の重岡節。楽しい……

 

準備万端冬空とリップ

いつもの街もイルミネーション

OFFでもONでも素敵さ君はダーリンダーリン

大切なキスは甘いセリフとホラ

理想じゃ良い自分でも 寝巻きスリッパ現状にドン引き

まだ舞台はコンビニからの帰り道、思い返している彼女との冬の揉め事の続きです。

さっき勝手に妄想した内容で続けると、計画している彼女の誕生日のことかな。

その日はデートだから、いつもの「潤い=愛」は「口元=リップ=キス」に変換されるのがオシャレ。

イルミネーションがONでもOFFでも、彼女の格好がONでもOFFでも(ドレスでもパジャマでも)(またorの技法)、いつだって2人で見る景色は綺麗だろうなと想像する。

「甘いセリフ=甘いアイスクリーム=甘いものが結局好きな彼女」も思い出す。

でも計画しながら家でくつろぐ普段の自分は、甘いセリフなんて似ても似つかない男で。それが紛れもない現状で。また苦笑いしてしまう。

ここで歌いだしの”スリッパ”を回収してるのもため息が出る。

本当に重岡くんの脳って文学で、思想の根本がロマンティックで、自分の世界でプカプカ浮いているみたいな、上手く言えないけれどいい意味で遊び上手。

 

”しっかりついてこい”くらいがカッコいいのに

あ、この愛おしくて面倒くさくてどうしようもなく良い男は、この物語の主人公は濵田くんのことだったのかよ、と錯覚する。この節を濵田くんに歌わせた罪は大きい。

 

時間制限アイスクリーム

ドア前一人シミュレーション

ただいまおかえり ぎこちなくてもダーリンダーリン

幸いなことは甘いアイスがほら

リハ通りいけばそれでいい うんコレでいい あ~

ここでやっと冬の回想が終わり、オレンジに灯る家に到着します。

いつまでも思い出にふけっているとアイスが溶けてしまうし、ついに腹をくくって家に帰る。彼女のこと手に取るように分かると自負しているけれど、やっぱり彼女には敵わないから念入りにリハーサルしなきゃならなくて。

大丈夫、今夜もきっと大丈夫だよ。(本当に主人公が愛おしい)

 

 

期間限定アイスクリーム

バニラかチョコのバリエーション

白か黒かで余り物はダーリンダーリン

曖昧な時は甘いチョイスをホラ

ビターで苦いのが僕は好き うんソレで良い

 

 

負担軽減アイスクリーム

酸いも甘いもノンフィクション

あの手この手で何がなんでもダーリンダーリン

「心配事の9割以上はホラ

起こらないって言ったでしょ?」

ハイハイ よく笑うぜのんきに

主人公、彼女と対面します。

やっぱり甘いものに目がない彼女はアイスクリームのおかげでご機嫌で、ごめんねの負担は軽減されたみたい。

口酸っぱい小言も甘い雰囲気も全部2人の思い出。

で、ずっと言い忘れていたけれど、バリエーション、シチュエーション、コミュニケーション、イルミネーションに次ぐノンフィクションの韻祭り、ありがとうございました。気持ち良すぎて溺れた。

ちなみに彼女は、「男と飲みに行ったって言っても、既婚の60代部長が支払いにきただけだし」なんて主人公の心配を笑い飛ばすし、「どうやって謝ろうかなとか、アイス買ったけどいらんって言われたらどうしようとか、どうせウジウジ心配してたんでしょ」なんてバレバレだし。

「でも、なんともない食事会だったわけだし、仲直りできたし、貴方の心配事も、9割以上は結局起こらないらしいね!」なんて、笑うんだ。

また彼女の手のひらの上で転がされながら苦笑いする主人公。

「まあでもそんな僕たちの関係も悪かないよね、否、最高だよ」が溢れている。

ただのでっかい愛だった。

 

oh good day... oh bad day...

oh good day... oh bad day...

oh good day... oh bad day...

oh good day... good day...

 

いい日も悪い日も酸いも甘いも色々ある人生だけど、必ず最後は良い日(good day)で終わる。

ごちそうさまでした。本当に。

 

 

 

 

賑やかなお母様と寡黙で仕事人なお父様に育てられた少年重岡大毅が持つ、壮大な、凡庸な、愛のイメージ。「おかん」に頭が上がらない「おとん」の話も多々話してくれるから。

そしてお姉さんを持つ第二子長男というバックボーンの思想への影響もかなり趣深い。

 

この曲について本人は、「男性はやっぱり、白黒ハッキリするべき時も、つい女性にだけは甘くなってしまうものです。もはや宿命レベル。世の男性諸君。めげずに頑張ろう。そんな気持ちも込めて作りました。笑」と。

これまでもたくさんの音楽を生み出してきた重岡くん。

「魂込めた」だの「全部絞り出した」だの言って、世の中の不条理に負けるな、みんな宝ものだよというメッセージを込めて、音楽に人生をかけるように、なにか自分の大切なものを削るように音楽に縋っていた彼が、

ここ最近は、ただ何気ない日常を歌ったり、大切な人への無償の愛を歌ったりする。

もちろん根本は何も変わってなくて、すべて良い意味で話している。

今回だって完成したときに「お気に入りの曲できました♪」と言われた時は、さすがにひっくりかえりそうになった。そんなテンションで創り上げたレベルじゃない美しさ。

まだまだ皮を剝ぐ逸材。天才。とんでもなく努力家なのは知っている上であえて言いたい。天才だよ。

 

 

 

カップリングのバニラかチョコが好きすぎるから、読み解くまでウズウズして仕事に手がつかない」「サクッと曲を解釈したら満足だから」と言い聞かせて記し始めただけなのに、また6000字に近いところまで来ちゃった…

 

 

 

 

 

 

今日は7月30日らしく。望ちゃん、お誕生日おめでとう。おじちゃんたちに「まだ」25歳と言われることに嫌気がさしてませんか?こんなにも頼もしくて対等に居ようと努力してくれる最年少が居ること、「まだ」25歳の貴方が居ること、そのメリットはチームにとってあまりにも大きすぎると日々感じています。絶対当り前じゃないはず。

ずっと食らいついて、大きく成長してくれてありがとう。

 

 

 

 

珍しく濵田くんの話じゃなくて、まさかの「バニラかチョコ」の話で一本備忘録を書いてしまったから変な感じ。放っておいたら今度こそ1万字越えになっちゃうから、濵田くんへのお手紙もそろそろ書きたいものです。

最高に”お気に入り”な曲に出会えた2021の夏、ありがとう重岡くん!

真夏の愛が詰まったNEWシングル、ありがとうジャニーズWEST

暑中お見舞い申し上げ…ました!